VIAGGI

SiciliaGiugno 2005

パラッツォ・アドリアーノという村をご存知だろうか。

とても小さくとりたてて何もない村だが、そこが大好きな人は世界中におり、鉄道も通らないその村を訪れる日本人も少なくないそうな。知ってる人は知っている、映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のあのパラダイス座があったとされる村である。

『ニュー・シネマ・パラダイス(原題:Nuovo Cinema Paradiso)』は2次大戦後のシチリアが舞台で、村唯一の娯楽である映画をこよなく愛する少年トトと映写技師アルフレードの友情を軸に展開する物語である。トトの初恋なんぞも絡み、更に完全版では「なんて事よのう~!」と号泣必至なストーリーとなっている。人生のスレ違いを観客が見届けるあたりは、同じく伊映画『ひまわり』にも共通する永遠の泣きポイントか。

攻めの走りをみせる運ちゃんと前方に広がる牧歌的風景
攻めの走りをみせる運ちゃんと前方に広がる牧歌的風景

朝。今日は早起きですぞ。なんと早朝6時半出発のバスでジャンカルド村、もといパラッツォ・アドリアーノを訪れるのだ~!!

停留所ににゅっと現れた青いローカルバスは、殆どの座席の手すりがもぎ取られたオンボロバスであった。アウトストラーダで乗用車を追い抜かし(!)、山道をうねり、砂利道でジャンプしながら、わがオンボロ号は快調にブッ飛ばす。

斜面のへばりつき方が尋常じゃない村を超え・・・
斜面のへばりつき方が尋常じゃない村を超え・・・

本当にたどり着くのかと不安になりかけた時、ようやく映画『ゴッドファーザー』でお馴染みのコルレオーネ村に到着。そしてまた山道をウネウネ進み、ふぅ、ようやく着いたとバスを降りた目前に広がっていた光景は・・・まさにあの『ジャンカルド村』のピアッツァ(広場)であった・・・!

ピアッツァは映画で見るより何十倍も狭い
ピアッツァは映画で見るより何十倍も狭い

「オレの広場・・オレの広場・・」を繰り返す気狂い男の寝床である水汲み場の主柱はよく見ると羽の形をしている。想像より更に狭小で、ひざを折らないと成人男性は寝れないことが判明。

その向こうはパラダイス座を上から写していた教会だ。おお、映画のとおり鐘がある。15分置きに鳴るとはなんと働きモノ。横はイタリアの喜劇役者「トト」の映画を写した家の壁か??(その直後パラダイス座は炎に包まれる)。

確かこんな形状の家だったような・・・
確かこんな形状の家だったような・・・

観光案内所にて壁に掛けられた映画撮影時の写真を眺めていると、ツツツ・・と歩み寄るおっちゃんが。映画を見て来たのかと問う彼が、それではと2004年にオープンしたという、横には土器も展示されてるプチ博物館を開放してくれた。穴倉のような薄暗いそこにはこれまた撮影時の写真が大量に額装され丁寧に飾られてある。

ファンにはたまらない写真たちがところ狭しと
ファンにはたまらない写真たちがところ狭しと
これはもう象徴的な1シーンですな
これはもう象徴的な1シーンですな
トトの瞳がキラキラしてるのが演技と思えません
トトの瞳がキラキラしてるのが演技と思えません
あの辺にパラダイス座があって・・・など、親切に説明を受け、しまいにゃあ「レガーロ(プレゼント)を持っていきたまえ」と村特製カレンダーや豪華な冊子を二人分渡される。

ヴェネツィア本島では地図すらも有料であったというのにこんなコスト高なものをタダで振舞うとは・・・。関係ないがこのおっちゃんとはその後も村のあちこちで会う。バールのトイレでハチ合わせした時は、村の小ささを実感したものだ。

バールでラテ・マキアートをすすっていると、一台の大型バスがピアッツァに滑り込んできた。ほう、団体で来ることもあるのですな。その西洋人団体はガイドに率いられ先程のプチ博物館に入ったようだ。こんな訪問客を村民も慣れっこなのか「デカいバスが来ただ~」と騒ぐ様子もない。再び散策開始。トト少年の家、アルフレードと散歩したトンネル、小学校など位置を検証したかったが事前調査が甘く解析不能。

本当に人里離れた村なんであります
本当に人里離れた村なんであります
ミニマムなバルコニーとフランス窓がステキな他人さまの家
ミニマムなバルコニーとフランス窓がステキな他人さまの家

と、先程の団体バスが動きだした。どうやら撤収するらしい。マイクを持ったガイドが車内から「さぁ、あのシンプルな顔の二人に手を振ってやろうではありませんか!」と乗客を扇動してるらしく、にこやかに乗客もそれに応じる。多少テレながら手を振り返す。

正午。お昼をいただこうと村で唯一の(??)トラットリアで手打ち麺の特製パスタとインサラータをご注文。カンカン照りの本日の飲み物はもちろんオヤジビッラ。コクコク。ピャ~~~~!!

このトラットリア、白壁に所々レンガをあしらい、奥には重厚なバールカウンター。壁の写真をふと見るとここにもニュー・シネマの写真。火災シーン撮影のクルーがパラダイス座に火を放っておる。あ、あちらにも。やはり撮影は村民にとって大切な思い出なようだ。

石のアーチがステキな庶民的トラットリア
石のアーチがステキな庶民的トラットリア
「カンヌ受賞映画ニューシネマパラダイス」と誇らしげ
「カンヌ受賞映画ニューシネマパラダイス」と誇らしげ

店内を物色してるうちに料理到着。まずは野菜のインサラータだ。もっさもっさ。うん、普通にンマい。さぁさ、ポモドーロのごった煮ソースパスタを食そう。うん、家で打ったと猛烈アピールするだけにこれまた普通にンマい。パーネにも付けて舐めたように皿もキレイ。ゲフ。

隣のテーブルで従業員の娘やジイさんも食し出す。このジイさんなかなか食欲旺盛で、プリモ、セコンド、果物まで食しておられた。我がコロナ隊も見習わねば。

村人が現代人なのすら映画ファンには不思議な感覚
村人が現代人なのすら映画ファンには不思議な感覚

そうこうしてるうちに我々が乗るべき帰りのバスがピアッツァに現れた。また来るぜと誓ったかどうかは忘れたが、行きと同じオヤジがハンドルを握る(という事はまた飛ばす)バスに乗り込み、夢のようなひと時に別れを告げた。

帰りもよろしくお願いしやすぜバス隊長!
帰りもよろしくお願いしやすぜバス隊長!

少し山道をうねり、後ろを振り向くともう村の姿はない。ホントに山間に生えてる村なのだなぁ。あれだけ恋焦がれた映画の中の村が遠ざかっていく寂しさを感じながら表敬訪問は終わった。

パレルモに戻りまた精力的に活動しだす。午後5時でまだギラギラ太陽が照りつける中、マグエダ通りをカッポカッポ。ピアッツァのベンチでまどろみ、まだ乗船切符も買ってないくせに「ああ明日はシチリアを離れるのかぁ。そしてこの旅行ももうすぐ終わりかぁ」などと考える。そうそう、明日の夜行フェリー便でナポリへ向かうのだぁ。イタリアでの旅はあと丸2日続く。

イタリアでTakeAwayといえば「切り売りピッツァ」や「パニーニ」などが大半ですが(カーニボ調べ)、イタリア惣菜や中華などもあります。

しかも、店先にずらりと作り置きしているので思わず見入ってしまいます。ヘタな呼込みを雇うよりかなり効果が期待できるのでは。。。というわけで、今夜のご飯を求めて「食の大捜査線」をスタートしましょう!

パレルモの町を北へ東へと歩きまわって見つけたのが、クリスマスなどでおなじみの「鳥の丸焼き屋」です。大型オーブンの中でクルクル回る姿にノックアウトされました。ぬらりと店の中にすべり込み、「ポッロくださいましぃ」とおやじに告げます。「1ポッロでいいのかい?」と不敵な笑みを浮かべ、オーブンから丸焼きを取り出すおやじ。そしてここから、素敵なショーの開始。取り出した丸焼きを食べやすいようにはさみでチョッキン。

「レモンは好きかい?」とニヒルな笑みを浮かべながら、特性レモンソースを刷毛で丹念に塗り込みます。空いた方の手で箱を取り出し、大きなスコップでポテトフライを1回、2回、3、4・・・うぉーーー大盛りですぅ!!そしてその上に、丸焼きをやさしくセットし、ふたたびスコップを手に。放物線を描いて宙を舞うポテトたち。一瞬、虹が見えた気がしたでございます。「おっと、こいつらも連れて行きな」と、小さなピザパンを加えてショーの幕は閉じました。

ホテルへ戻り夜宴開始。スーパーで買ったヴィーノとビッラで乾杯!さあ、メインのポッロさまのお出ましですぅ。

お味の方はちょっと濃いめですが、ヴィーノとの相性はグッ!わたくし的には皮部分が一番ンマかったです。ピザパンもふんわりしておりチーズが少しとろけてグッ!ポテトなんかいくら食べても減らない感じが食いしん坊にとっては魂が抜ける思いです。あまりのボリュームにその晩は食べきることができないほどでした。

それではみなさま、ブォナペティート!!

わーい!いただきま~す!ポッロ、イモ、ピザパン、サラーメ、生ハム、ビッラそしてヴィーノ。
わーい!いただきま~す!
ポッロ、イモ、ピザパン、サラーメ、生ハム、ビッラそしてヴィーノ。