VIAGGI
チュンチュンチュン~
「ミヅーラさま、最後にもう一度カンポ広場へまいりませんか」
早朝、宿を静かに出た際カーニボンが粋なことを言った。スケさんをカラカラ引きお宿からすぐの広場を見渡す。「シエナはカンポ広場に始まりカンポ広場で終わりましたねぇ」などと語り合ったかどうかは忘れたが、小雨の中、目抜き通りをバス停留所に向かって歩く。「カーニボン、まったくもって腹が減りましたぁ」「ミヅーラさまは寝てる時と喰ってる時以外、いつもそうおっしゃる」

「ワタクシどものフィレンツェ行きはっと・・・」
乗車前に付近のバールで朝食をいただく予定が、週末の朝だからか開いていない。空腹のまま乗車したプルマンは人々の日常的な移動に使われているのか、停留所ごとでわっさわっさと人が乗り込みかなり窮屈。都会に近づくにつれ徐々に強くなる雨を見ながら「今までお天気に恵まれていたのがラッキーだったのでしょう」と話し合う。
フィレンツェのバス停に降り立ち、まずはお宿さがし。通りかかったお宿のインターホンを押すと、応答もなく解錠。安宿は1階にエントランスがなく一般の住居のごとく存在する。中へ入るとどこからか声が。
「こっちよ~・・・上よ~・・・」
ソフトな声の主は2階の階段吹き抜け部分から手招きする上下スウェット姿の男性。朝の清掃中のようで、空き部屋があれば見せてほしいとの要求に「いいわよ~」としなやかに応じてくれる。おお、部屋は恐ろしくキレイ!
先程から微動だにせず椅子に座っている置物が生きた翁とわかり挨拶すると、高い声で返された。あれ?シニョーラ?と顔を見ると口ヒゲが生えており、フェミニンな親子に挟まれながら不思議な気分でチェックインしたのであった。

今から日帰りで訪れるサン・ジミニャーノは、以前『イタリア縦断1200キロ』という番組で紹介された街である。『中世の摩天楼』と評されたこの街は、13世紀には72もの塔が乱立するも今は激減し14のみ・・・と言うが、14も塔が生えていれば充分な特異性である。
到着しバスを降りて城壁の門をくぐると中世の街が広がる。先程からの中級の雨が東南アジア級の土砂降りに変わる中、腹も減ったしまずは本日のお昼どころを探すこととする。

雨が上がりかけたところでステキな1件を発見。名物・チンギアーレ(猪肉)のソーセージがないのは残念だったが、シエナ発祥ピチはあるとな。
まずは赤ヴィーノを半分とプロシュット盛りでかんぱーい。ごっきゅんごっきゅん。ピヒャァ~~。「まるで生肉のような肉々しさですねぇ、カーニボン」と語り合ったかどうかは忘れたが、多少臭めのソレとヴィーノのコラボを楽しんでいると、猪肉のラグーソースがけピチが運ばれる。これもまた濃厚でンマい!昼間からこんなにディープに食し酔えるなんて、普段土嚢を積んで頑張っている甲斐がありますねぇ、カーニボン。

「お城に戻ったらしばらくは味噌と塩ですよ、カーニボン」

さて、あれだけの雨でずぶ濡れになったのがウソのように、今はピーカン晴れである。「これだけ晴れれば濡れた羽も乾きますぅ」とカーニが言ったかどうかは忘れたが、腹ごなしに今回二つ目の塔、グロッサの塔に登ることとする。
「塔の入り口はあっち!あ、ちゃんと券を買ってくださいね!シニョーラ、帰る前にこの展示室もどうぞ!」と、観光客をさばく係のオバちゃんに圧倒されながら塔内部へ。

シエナのマンジャの塔と違いこのグロッサの塔内部は広々としており階段も鉄板製と現代風、それほど苦労もなく頂上へ。この塔を中心とするように他の塔がニョキニョキ生えており、そのはるか向こうにはやはりザ・トスカーナな風景が広がっている。



そこへ、目の前の塔の屋上に赤シャツのおっちゃんがヒョコっと出てきた。屋上にしつられたテラスセットへ腰をおろし観光客が満載されてるこの塔を見るおっちゃんと目が合う。
「ミ、ミヅーラさま、何者でしょうか」
「塔の管理人でしょうか。ご覧なさい、くつろいでますよ」
試しにおーいと手を振ってみると手を振り返す赤シャツ管理人を不思議に思いながら、再びコロナ隊は塔内部へ消えた。
「ミヅーラさま、このあとのご公務はエノテカ訪問でございます」という家臣に促され、しぶしぶ(嬉)静かな路地の1件に潜入することとする。
中は石造りで広く、客はコロナ隊だけのよう。ここの試飲システムはまずカードを渡され、それを試飲マシンに挿しそれぞれ単価の違うヴィーノ選択ボタンを押すと一定量がグラスに注がれる。また次をという場合はカードを別マシンに挿しこみ、そうするとカードに計2杯の記録が残り、最後にお勘定するらしい。

サン・ジミニャーノに来たからには!ということで、DOCGの白ヴィーノ『ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ』をお試し。そのしっかりしたお味たるや、赤ヴィーノに匹敵する、今まで味わった白の常識を覆される力強さ!帰りがけには「ぜひ地下のカンティーナをどうぞ」と勧められ、地下貯蔵庫を見学、大満足で再び街の散策へ。

この地域の特産物はイノシシ肉加工品で、あちこちに強烈なニオイを放った食料品屋が軒を連ねており、見るだけでも楽しい。少しのお土産をゲットしたところで「ミヅーラさま、お帰りのバスの時間が近づいてございます」という家臣の残念な宣言でこの中世の摩天楼都市を後にした。
よる9時~~~
カーニボンが頭の羽をブラッシングしながら「ミヅーラさま、そろそろお食事でも」。いつも以上に本日の夕食に気合を入れてるようで、いいヴィーノとお肉を食すつもりでございます、と鼻息荒く語る。
本日のお食事処は隣の席で親子3人がピッツァを喰らっている庶民的なお店。向こうの団体は歓声をあげて特大ステーキを迎え入れている。「アレを平らげるのですねぇ(羨)」「二人では喰いきれないデカさですねぇ(羨)」


一方我々はプロシュット盛りをキアンティと共に美味しくいただく。カモ肉のラグーソース及びトリュフとフンギのパスタ、豚煮込みなどをつつく。最後はサービスで恵んでいただいたリモンチェッロをキュッ!道すがら調達したジェラート舐め舐め宿路についた。

「ミヅーラさま、先ほどから羽に視線を感じますです」