VIAGGI
ぬお~~!あ~さ~~!
やっとメシが食えるという雄たけびがホテル内にこだまする。腹が減ると眠れないミヅーラさまにとって、この初日の時差ボケほど辛いものはない。なので朝食は生活のリズムを取り戻す第一歩でもあった。
「カーニボン、腹が減りましたぁ」「ミヅーラさまは復活祭だろうがナターレだろうが、いつもそうおっしゃる」ってんで、7時解禁と共に食堂代わりのロビーへなだれ込み、テーブルにキレイに並べられた小さなバターやジャム、ハチミツの種類の多さに大陸式朝食を感じる。
レセプショニストと給仕を兼ねる伊達オヤジによって運ばれたカップッチ~ノとカッフェでイタリアを実感。もちろんイタリア式にザザーと砂糖を大量投入することも忘れない。「このパーネはなかなか美味ひゅうございますねぇ、ミドゥーラたま」カーニボンは珍しく好みのパーネに出会ったよう。
ゲフッ。食った食ったってんで、街を徘徊する前にまずは明日のパルマ出発時刻を調べるため駅へ。実は今回パルマのお宿を事前に抑えたのは、ちょうどいい午前中の列車がなく、お昼近い到着ではお宿探しが難航するやもという懸念があったためである。
「パルマはそれほど見どころがなさそうでございますよ。食に徹することができれば、朝からの到着でなくても宜しゅうございましょう」なる事前情報は全くのデマであることが後ほどわかったが、とにかく本日は見どころたくさんのヴェローナをカッポ開始。
駅からお宿や旧市街へ全て徒歩で行けるのはありがたい。旧市街に入り目に飛び込むは『アレーナ』と呼ばれる、ローマのコロッセオに次ぐ2番目に大きいローマ時代の円形競技場。夏はここでオペラなんぞ上演されるそうな。
まずは観光案内所で地図を頂戴し「貴方はなぜロメ男なの」で有名なバルコニーのあるジュリエッタ邸を探訪いたしましょう。
「あれぇ、ここら辺のハズですが見つかりませんねぇ」
「おかしいですねぇ。旅日記では行ったことにしておきましょうか・・・(悪)」
住所を頼りに探すも見つからず諦めかけたとき、開いている門の向こうに人だかりが見えた。ここか!何度も前を通っていたのに!
門のトンネルをくぐると先は中庭で、なでなですると幸運に恵まれる右チチを持つジュリエッタ像があり、ちょうど日本人ツアー客たちがお行儀よく順番にチチを揉んでいた。『触れると幸運』系オブジェはみんな触るため他の部分より輝いているが、先ほどジュリエッタ邸を探し回っていたとき通りにある偉人らしき像の足元にいる鳩の頭すらも輝いていた。
ロメ男が夜這いをかけたとされる問題のバルコニーは意外に小さく、敷地内のベタな土産物は例によって「ここで売らんでも」的なグッズが並べられてあった。
「次の公務はどうなっていますか、カーニボン?」
「はいぃぃ、『目抜き通り商店のウィンドウディスプレイをモノ欲しそうに眺める』となってございますぅ」
次はロメ男邸に行かんのかいという疑問はみじんもなしに、ガラスに鼻の脂をこすりつけウィンドウショッピングを堪能。カーニボンは新たなコルク抜きをお買い求めしたかったようだが、最後のイタリア~英国間の機内持ち込みで引っかかりそうなため断念。(詳しくは5日目をご覧あれ)
この日は心地いい日和で、喉も渇いたことですしエルベ広場のカフェのテラス席で白ヴィーノでもいただきましょう。周りは食料や衣料、土産物やナターレ関連グッズの市が開かれ、眺めているだけでも楽しそう。ヴェローナ旧市街の中心広場にてお飲み物をいただくということは、結構なショバ代が取られるのではと懸念するも、デカいオリーバとクリスプスのおつまみ付で純粋にヴィーノ代2杯分の3.5ユーロ!つまり2人で500円弱!!ビバ!このカフェ!!
さて次の公務は・・・とカーニボンが手帳を開くと「すはっ!ワタクシの綿密なスケジュールが消され、昼メシに『BREK』と上書きされておりますぅ!」「カーニボン、どうしても行きたかったのです・・・」
ミヅーラさまご所望の『BREK』とは、『Autogrill』などのようなセルフのお食事処で「ヘタなリストランテよりも美味しいほど」とネットで評判だったのだ。セルフは明朗会計な上クイックレスポンス。ケチーラさまの旅のスタイルにはピッタリ。
ワタクシはローストビーフとフンギのクリームソースペンネ、カーニボンはツナのリゾットにプロシュットクルード盛り。まずは瓶ビッラでかんぱーい。ごっきゅんごっきゅん、ピヒャ~~~~!!!お食事も口が火傷するほどアッツアツではないが普通にンマい。周りを見ると皆さん案外ライトなお食事で、豆インサラータにフォルマッジョにパーネなど、欧州人のセンスを匂わせる組み合わせ。
腹も膨れたので運動がてら散策続行。ヴェローナ市街をS字に流れるアディジェ川まで歩きましょう。
「ガリバルディ ブリィィィッッジ」
地図を広げ現在地を確認するコロナ隊に、おっちゃんがヌッと現れ言う。最初意味がわからんかったが、異人のワタクシどもに「ここはガリバルディブリッジだ」と英語で説明したらしい。礼を述べると、アトピーの肌が痛々しいおっちゃんは満足げに原付バイクでブロロォ~と消えていった。おっちゃんありがとう。そして肌お大事に・・・。
「ミヅーラさま、この後のご公務は夜ゴハンに備えシエスタとなってございます」
多くの店が昼休みなのでワタクシどもも充電しときましょうというのが優秀な家臣カーニボンの考えだが、ワタクシはというと不思議なくらいに眠気もなく「時差ボケは早くも克服です!」とばかりにテレビなんぞ観ておった。かんむりバッテリーが着々と消費されているとも知らずに・・・。
よ~~る~~。
「ミヅーラさま、ワタクシはそろそろ空腹を感じてまいりましたぁ」
「ホホホ、カーニボンは羽をブラッシングしているとき以外、いつもそういいますねぇ」
ってんで、ロンプラ先生から「パスタはどれもンマい」とご推薦いただいたお食事処へ向かうもまだ開店前。時間を潰しているうちに
「すはっ、カーニボン~眠りの神が降りてきました~・・」
「それは危険です!だからシエスタをしてくださいと申し上げたでしょう!」
と、家臣からたしなめられた次の瞬間にはもうシャットダウンしていた。
「ミドゥ~ラさま~!それ、再起動して差し上げましょう!」
と、背中のブレーカーがガコンと上がり一旦意識が戻るも、開店したリストランテに潜入後は眠気との戦いで、お料理の選択どころではなかった。が、とりあえず名物をオーダー。
「ムニャムニャ、ムニャ~」
「『ポレンタ付きプロシュット・クルード盛りと、馬肉入りビーゴリをください』と申しております」
家臣カーニボンが通訳を担う。
「申し遅れました、ワタクシは王国の家臣カーニボンで、こちらの睡眠中のお方は女王のミヅーラさまでございます。ワタクシにはカヴァッロ(馬肉)といわしのスパゲッティをくださいませ。ミヅーラさま、ヴィーノはどういたしましょうか」
「ム~ニャ・ムニャ・ム~ニャ~」
「ヴィーノ・デッラ・カーサ(ハウスワイン)だそうです」
運ばれた料理を(寝ながら)もっさもっさし、赤ヴィーノを(寝ながら)ごっきゅんごっきゅんしたのだが、なんせ記憶がないため詳細がお届けできず残念である。
夜のヴェローナの街を(寝ながら)お宿へ向かって歩く途中、カーニボンがケバブ屋に立ち寄った。寝ている女王に気兼ねして食事を心ゆくまで満喫できず申し訳ない・・・と心の中で反省したかどうかは忘れたが、(寝ながら)臭いあたまをワシュワシュ洗って即効眠りの国へ。
「ミヅゥ~ラたまぁ~お待ちくださいぃぃ~~」遠くで声が。夢の中で追いかけてきたのは唐草模様の風呂敷で旅の装いをした忠実な隊員犬ぱむであった。